【Gastroduce Japan】食品EC成功のためのアプローチ:自家需要とギフト需要の攻略法
食品EC市場は拡大を続けていますが、その攻略には自社商品の特性を理解し、適切なアプローチを行うことが不可欠です。Gastroduce Japanが提唱する商品分類に基づいたアプローチ方法を詳細に解説し、売上向上に繋がる戦略をご紹介します。
はじめに:商品分類の重要性
食品ECにおいて、商品の分類によって市場の性質や仕掛け方が全く異なります。自社商品を正しく分類し、その位置づけを正確に捉えることが、効果的な戦略立案の第一歩となります。食品は大きく「自家需要」と「ギフト需要」に分けられます。

- 自家需要: 消費者が日常生活で消費するための商品です。
- 必需品: 米、水、わかめ、梅干しなど、生活に不可欠な商品がこれに該当します。
- 嗜好品: もつ鍋、バームクーヘン、ピザ、餃子、スイーツ全般など、趣味や楽しみのために購入される商品が挙げられます。
- ギフト需要: 特定の目的(贈答)のために購入される商品です。
- 慶弔品: 内祝い、誕生日、還暦祝いなど、お祝いやお悔やみの際に贈られる商品です。
- 季節品: バレンタインデー、母の日、父の日、お中元、お歳暮など、特定の時期に需要が高まる商品です。
1. 自家需要の攻略
自家需要の商品は、必需品と嗜好品で特徴が大きく異なるため、それぞれに合わせた戦略とアプローチが必要です。
1.1 必需品と嗜好品の特徴とアプローチ方法
必需品は、顕在ニーズが大きく、価格相場がはっきりしており、比較検討されやすい購買傾向にあります。そのため、検索広告が主要なアプローチ方法となります。
一方、嗜好品は顕在ニーズが小さく、価格相場があいまいな傾向があります。購買傾向としては衝動買い型が多く、バナー掲載型広告(タイムセール広告・メルマガ広告)が効果的なアプローチ方法とされています。
1.2 攻略の打ち手:14の施策
ECでの自家需要の売上向上には、大きく14の施策が存在します。これらは流入元(PLACE)、販促(PROMOTION)、商品・サービス全般(PRODUCT)、価格戦略(PRICE)という4つの観点から考慮されます。

流入元(PLACE)の施策
モールの検索エンジンからの流入を増やすための「検索」対策が重要です。また、楽天ランキングなどのモール内ランキングからの流入を狙う「ランキング」施策、CRMツールであるメルマガやLINEからの流入を促す「メルマガ・LINE」の活用も挙げられます。さらに、楽天お買い物マラソンや楽天スーパーSALEといったまとめ買い・ポイントアップ企画を活用する「買い回りイベント」も効果的です。
販促(PROMOTION)の施策
期間限定や値下げを強調する「タイムセール広告」は購買意欲を高めます。モールの会員に向けた「メルマガ系広告」も有効な手段です。そして、検索上位に表示されるPR部分の「検索広告」を活用することも重要です。

商品・サービス全般(PRODUCT)の施策
食品販売ノウハウに基づき、潜在的な購買欲求を顕在化させるための「LPの作り込み」は必須です。食欲を掻き立てるような「写真の強化」も欠かせません。配送スピードの速さも顧客満足度に繋がるため、「配送」の改善も重要です。商品ページの「わかりやすさ」を高める「シンプルさ」も購買率に影響します。
価格戦略(PRICE)の施策
送料を店舗が負担する「送料無料」は、特に新規顧客の場合にCVR(購入率)が大きく低下するのを防ぐために重要です。常に顧客が買いやすい価格を実現する販売方法である「EDLP(Everyday Low Price)」も効果的です。30%OFFなどの「タイムセール・値引き」によって限定感を演出し、購買を促す方法も有効です。
1.3 商品の特徴別攻略法
商品の特徴を見極め、適切な広告戦略を検討することが重要です。
施策 | 必需品×低単価 | 必需品×高単価 | 嗜好品×低単価 | 嗜好品×高単価 |
---|---|---|---|---|
検索 | 〇 | 〇 | 〇 | |
ランキング | 〇 | 〇 | 〇 | |
メルマガ・LINE | 〇 | 〇 | 〇 | |
買い回りイベント | 〇 | 〇 | ||
タイムセール広告 | 〇 | 〇 | ||
メルマガ系広告 | 〇 | 〇 | ||
検索広告 | 〇 | 〇 | 〇 | |
LPの作り込み | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
写真の強化 | 〇 | 〇 | ||
配送 | 〇 | 〇 | ||
シンプルさ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
送料無料 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
EDLP | 〇 | 〇 | ||
タイムセール・値引き | 〇 | 〇 | 〇 |
この表は、各商品の特徴(必需品か嗜好品か、低単価か高単価か)によって、どの施策が特に有効であるかを示しています。例えば、必需品かつ低単価の商品では、検索、ランキング、買い回りイベント、タイムセール広告、メルマガ系広告、検索広告、LPの作り込み、シンプルさ、送料無料、EDLP、タイムセール・値引きが有効とされています。
1.4 商品構成の考え方
必需品と嗜好品をバランスよく取り揃えることで、販売戦略の幅を広げることが可能です。
必需品のみを取り扱う場合、価格競争から完全に抜け出すことは難しく、広告費は低いものの利益が残りにくい傾向があります。嗜好品のみを取り扱う場合は、価格よりも値引き幅や広告販促が重要になり、広告費比率が高まる傾向が見られます。両方を取り扱うことで、必需品と嗜好品を組み合わせた柔軟な販売戦略が可能となり、バランスの取れた経営が期待できます。
1.5 時間軸での販売戦略の変更
商品やカテゴリのプロダクトライフサイクルに合わせた広告戦略の検討も必要です。
商品の導入期や成長期には、市場が小さく価格競争が少ないため、広告やタイムセールによって集客・販売を行う「広告・値下げによる拡販」が有効な戦略となります。この時期は検索からの流入はあまり期待できません。一方、市場が確立され相場感が出てくる成熟期や衰退期には、広告効果が弱まるため、大幅なセールではなく、10~20%程度の値引きに留め、いつでも買いやすい状態を作る「EDLPによる買いやすい状態の構築」が推奨されます。
1.6 まとめ:自家需要の攻略ポイント
自家需要は、必需品と嗜好品に大きく分けられます。
必需品は価格相場がはっきりしており、比較検討されやすい傾向があります。顧客は必要なタイミングですぐ欲しがるため、EDLP戦略との相性が良いです。低単価品は「買い回りイベント」や「検索広告」、高単価品は「検索広告」での攻略が特に有効です。
嗜好品は価格相場が薄く、店舗のこだわりによって大きく変わるため、定価設定が必須です。割引などの限定感を演出することで衝動買いを促すことができます。爆発的な購買を促すためにはランキング上位を狙う戦略との相性が良く、低単価品は「タイムセール訴求できる広告」、高単価品は必需品と同様に「検索広告」が有効です。より抽象的な関連検索ワードを設定し、検索対策を行うことも重要となります。
商品によっては分類が曖昧なものもあるため、自社商品の位置づけを正しく捉えることが重要です。
2. ギフト需要の攻略
ギフト需要はリピートが少ない特性を持つため、新規顧客をターゲットに費用対効果高くアプローチすることが基本戦略となります。
2.1 自家需要との違い
ギフト需要の顧客は自身で商品を消費しないため、商品ページで購買まで決断させる必要があります。また、予算を決めて購入する顧客が多いため、安さの意思決定優先度は相対的に低く、予算内で最もニーズに合う商品が選ばれる傾向があります。このような特性から、ターゲットは新規顧客が中心となり、新規来訪に対する費用対効果を見極めた施策が重要となります。
2.2 基本戦略:アクセス数・転換率・客単価の向上
ギフト商戦は新規顧客獲得のため、アクセス数、転換率、客単価の3つを高めるシンプルな手法をとります。

① アクセス数の獲得
楽天ではシーズナル特集広告が有効で、それに続いて検索・ランキングからの流入を想定します。この際、「季節品」と「慶弔品」では異なるプロモーション戦略を取ることが必要ですます。季節品は日程が決まっており、売上が一定期間に集中するため、特集広告の効果が大きいです。一方、慶弔品は日程が決まっておらず、需要が一年を通して分散するため、検索広告やモール内SEOが有効とされています。
② 転換率と③ 客単価の向上
人気商品をしっかりとリサーチし、競争力のある商品設計を行うことが重要です。商品設計においては、商品概要(特徴、素材、製造方法、サイズ、容量など)、ターゲット(年齢層、性別、ライフスタイル、購買動機、ニーズなど)、訴求要素(ギフトパッケージ、健康要素など)、レビュー内容、売れ筋の価格帯、配送スピードとオプション、ギフトサービス(名入れ、ラッピング、メッセージカードなど)といった要素を考慮する必要があります。
2.3 リピートの獲得戦略
ギフト需要でリピートを狙うには、商品ページを育てることで、季節品から慶弔品へ顧客を送客し、売上向上を狙うことが有効です。具体的には、お中元やお歳暮、父の日、母の日などの季節品で特集広告を通じて流入した顧客に対し、内祝いや退職、誕生日などの慶弔品でも利用してもらえるよう、商品ページを通じて育成していく戦略です。
2.4 まとめ:ギフト需要の攻略ポイント
ギフト需要は常連顧客のみでは大きな売上を創出できないため、新規顧客をターゲットに費用対効果高くアプローチすることが基本戦略となります。新規顧客獲得には、ユーザー数、転換率、客単価の3要素が重要です。
日程が決まっており大きな広告効果が期待できる季節品では特集広告が、日程が決まらず需要がばらつく慶弔品では検索広告やモール内SEOがそれぞれ有効です。人気商品をリサーチし、競争力のある商品設計を行うことも重要となります。
さらに、ギフト需要でリピートを狙うには、商品ページを育てていくことで、季節品から慶弔品へ送客し、売上向上を狙うことが有効です。
結論
食品ECで成功するためには、自社の商品が「自家需要」と「ギフト需要」のどちらに属するのか、さらに細かく「必需品」「嗜好品」「慶弔品」「季節品」のいずれに当たるのかを正確に把握することが不可欠です。それぞれの特性に応じた適切なアプローチ戦略(流入元、販促、商品・サービス全般、価格戦略)を実行し、顧客の購買行動を促すLP設計と広告戦略を組み合わせることで、食品EC事業の売上を最大化することができるでしょう。