ECコンサル会社への相談を決めたものの、初回の打ち合わせで「まず現状の数値を教えてください」と聞かれ、その場でうまく答えられなかった、という経験を持つ担当者は少なくありません。コンサル会社を選ぶ基準についてはECコンサルとは|依頼できることと選び方で解説していますが、どれだけ良い会社を選んでも、依頼する側の準備が整っていないと、初動が遅れて成果が出るまでの期間が延びてしまいます。
本記事では、ECコンサル会社に依頼する前に、食品D2Cの担当者が準備しておきたい資料・数値・期待値のすり合わせ方を解説します。
初回商談前に準備しておきたい資料
コンサル会社は、初回の商談で現状把握のためにいくつかの資料を求めることが一般的です。事前に準備しておくと、商談時間を課題の深掘りに使えるようになります。
| 資料の種類 | 具体的な内容 | 準備の目安 |
|---|---|---|
| 売上推移データ | 直近12ヶ月程度の月次売上・注文件数・客単価 | モールの管理画面からエクスポートできる範囲でよい |
| 商品別売上構成 | 売れ筋商品・利益率の高い商品の一覧 | 上位10〜20商品程度で十分 |
| 広告実績 | 出稿している広告の費用・ROAS・CPA | モールごとの広告管理画面のスクリーンショットでも可 |
| 組織体制 | EC業務に関わる人数・役割分担 | 兼任者がいる場合は稼働時間の目安も |
| 過去の施策履歴 | これまで実施した販促・広告施策とその結果 | うまくいかなかった施策も含めて共有する |
特に「過去の施策履歴」は見落とされがちですが、うまくいかなかった施策とその原因の仮説を共有しておくことで、コンサル会社が同じ失敗を繰り返す提案をしてしまうリスクを減らせます。数値が完璧に揃っていなくても、現時点で分かる範囲で構わないので、まず手元にある情報を整理しておくことが重要です。
期待値をすり合わせるための3つの質問
依頼する側が自社に問いかけておきたい質問が3つあります。1つ目は「何を達成できたら依頼した意味があったと言えるか」という成果の定義です。売上金額なのか、特定モールでの順位なのか、社内の運用体制の確立なのかによって、コンサル会社に求める動き方が変わってきます。2つ目は「どのくらいの期間で成果を見たいか」です。短期的な広告改善なのか、中長期的な商品ページの育成なのかで、優先すべき施策の種類が変わります。3つ目は「社内でどこまで実務を巻き取れるか」です。コンサル会社に実行部分まで任せたいのか、方針だけ相談して実務は自社で行うのかによって、依頼する業務範囲と費用感が大きく変わります。
契約形態の違いを理解しておく
ECコンサルティングには、大きく分けて「顧問型」「プロジェクト型」「実行代行型」の3つの契約形態があります。顧問型は、月次の定例ミーティングで戦略のアドバイスを受ける形式で、実務は自社で行います。プロジェクト型は、特定のテーマ(商品ページの改善、広告運用の立て直しなど)に期間を区切って取り組む形式です。実行代行型は、広告運用や商品ページ制作など、実務そのものを代行してもらう形式です。自社にどこまでの実行力があるかによって、適した契約形態が変わるため、依頼前にどのタイプを求めているかを整理しておくと、コンサル会社側も自社の提供メニューと照らし合わせた提案がしやすくなります。
資料が完璧でなくても相談を始めるべき理由
ここまで準備すべき資料を紹介してきましたが、すべてが完璧に揃うまで相談を先延ばしにする必要はありません。データの整理自体に時間がかかり、結局何ヶ月も相談できないままになってしまうケースも見られます。むしろ、どのデータが手元になく、どこから整理すればよいか分からないという状態自体を、コンサル会社に相談してしまう方が早く前に進むこともあります。完璧な準備よりも、現状を正直に伝える姿勢の方が、良い提案を引き出す上では重要です。
数値目標を検算しておく
「売上を伸ばしたい」という要望だけでは、コンサル会社側も具体的な提案がしづらくなります。依頼前に、自社の現状数値から簡単な目標値を検算しておくと、商談がスムーズに進みます。特に、訪問数・CVR・客単価のうち、どこにボトルネックがあるのかを自社なりに仮説立てておくと、コンサル会社の提案が自社の課題認識と合っているかどうかを判断しやすくなります。
目標月商 = 現在の月間訪問数 ×(目標CVR ÷ 現在のCVR)× 現在の客単価
| 項目 | 仮の数値 |
|---|---|
| 現在の月間訪問数 | 20,000人 |
| 現在のCVR | 1.5% |
| 目標CVR | 2.5% |
| 現在の客単価 | 4,000円 |
| 目標月商(20,000×(2.5/1.5)×4,000円の増加分で試算) | 現状比で約+67%の売上増加分に相当 |
この試算はあくまで簡易的なものですが、「CVRを1%改善できれば、これくらいの売上インパクトがある」という感覚を持っておくことで、コンサル会社からの提案の妥当性を自分たちでも判断しやすくなります。
社内の意思決定フローを整理しておく
コンサル会社からの提案を実行に移す際、社内の誰が最終的な意思決定をするのか、あらかじめ整理しておくことも重要です。提案のたびに稟議が必要で承認まで数週間かかる体制の場合、コンサル会社側もスピード感のある施策を提案しづらくなります。逆に、担当者レベルで実行できる範囲を明確にしておけば、小さな改善施策から素早く着手してもらいやすくなります。契約前に、どのレベルの意思決定にどれくらいの時間がかかるかを、コンサル会社に伝えておくことをおすすめします。
初回商談後にやっておきたいこと
初回商談が終わったら、その日のうちに社内で議事録を共有し、コンサル会社から出た提案・宿題事項・次回までに準備するものを整理しておくことをおすすめします。担当者が1人で商談に臨んだ場合、記憶をもとに社内共有すると、細かいニュアンスが抜け落ちてしまうことがあります。可能であれば商談に複数人で臨む、または録音・議事録ツールを活用して、提案内容を正確に社内へ伝えられる状態にしておいてください。特に、決裁者が商談に同席していない場合は、この初回商談の共有精度が、その後の意思決定スピードを左右します。
よくある失敗
| 失敗パターン | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 現状数値を準備せずに商談に臨む | 初回商談が現状把握だけで終わり、提案が先延ばしになる | 売上・広告・組織体制の資料を事前に用意する |
| 「売上を伸ばしたい」としか伝えない | コンサル会社が的を絞った提案をしづらくなる | 期待値の3つの質問に自社で答えを用意しておく |
| 社内の意思決定フローを共有しない | 提案が実行に移されるまでの時間が長引く | 承認にかかる時間の目安を事前に伝える |
まとめ
ECコンサル会社への依頼を成功させるには、会社選びと同じくらい、依頼する側の準備が重要です。売上・広告・組織体制の資料をそろえ、成果の定義・期間・社内で巻き取れる範囲を自社の中で整理し、簡単な数値目標を検算しておくことで、初回商談から具体的な議論に入ることができます。準備に時間をかけすぎて相談自体が遅れるよりも、現状を正直に共有した上で、コンサル会社と一緒にデータを整理していく進め方の方が、結果的に早く成果につながることも多いです。
よくあるご質問
Q. 数値データが整理できていない状態でも相談してよいですか?
A. 問題ありません。多くのコンサル会社は、初回商談でデータの整理方法から一緒に確認してくれます。ただし、可能な範囲で事前に準備しておくと、商談の密度が上がります。
Q. 複数のコンサル会社に同時に相談してもよいですか?
A. 問題ありません。むしろ複数社の提案を比較することで、自社に合った進め方や費用感の相場観を掴みやすくなります。
Q. 過去の失敗施策は正直に共有すべきですか?
A. 共有することをおすすめします。うまくいかなかった施策とその原因の仮説を伝えることで、同じ提案が繰り返されるリスクを減らせます。
Q. 社内に決裁者がいない場合はどうすればよいですか?
A. 決裁者が誰で、どのタイミングで巻き込む必要があるかを、コンサル会社に事前に伝えておくことをおすすめします。提案のスケジュール感を調整してもらいやすくなります。